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【書評】 植物と微気象 第3版 植物生理生態学への定量的アプローチ

図1【書評】



植物と微気象 第3版 植物生理生態学への定量的アプローチ

HamlynG. Jones 著 久米 篤・大政 謙次 監訳

森北出版株式会社 第12017222

ISBN978-4-627-26113-6 ソフトカバー486ページ 本体定価8500


本書は、植物生理生態学、農業気象学分野の研究者ならば、学生時代に一度は接したことのある、英国ダンディー大学名誉教授Jones氏の名著、”Plants andMicroclimate”の訳書である。植物と環境との相互作用の結果、植物がどのような応答を示すのか、その生理学的基礎の提供が本書の目的である。植物に影響を与える環境要素は多数であり、その機構も物理的なものから生理的なものまで広範である。従って、このような植物環境生理学に関する書籍は、分量と著者の数理的素養で内容が制限され、ともすれば定性的記述や写真に終始しがちである。しかし、本書を手に取っていただければわかるように、大部分のページに数式または具体的数値が載っていて、しかも、広範な領域をカバーしている。内容が広く浅くなってしまっている点は否めないが、本書の秀逸な点は、豊富な定量的記述である。植物と環境の大まかな関係は知っているが、研究や生産に実際に応用するためのモデルやアルゴリズムを作る定量的情報が少ないと日頃悩まれている方には、待望の書であると言えよう。

原書の初版は1983年、第2版は1992年の刊行である。この第3版は2014年の刊行なので、22年ぶりの改版である。この間の植物分子遺伝学研究、および、リモートセンシング技術の大幅な進展があり、本書はこれらの成果を取り入れ、メタボロミクス、フェノミクス等について言及し、大幅な拡充がなされている。特に、最終章(12)の「生理学と作物収量の改善」では、協調と対立の二律背反に陥りやすい品種と作型、つまり、生産性に貢献する遺伝的ポテンシャルと環境的ポテンシャルという観点から検討がなされていて、植物生産現場の関係者に興味を惹く内容であると思う。

11名の訳者と監訳者のうちの1名の計12名で全12章を分担して翻訳している。分訳にありがちな章ごとの記述スタイルや翻訳レベルのばらつきなどは感じられず、明快な日本語で統一的に翻訳されており読みやすい。これも、当該分野の第一人者であり、著者と親交の篤い監訳者の労作の賜物であると考える。慣れ親しんだ日本語で本書を通読できるようになったことは、植物と環境に何らかの形でかかわるより広範な研究者・フィールド技術者に対して、貴重な情報を得る契機になると思う。特に、環境植物学、植物生理学等の基礎を学んだ大学院修士課程レベルの学生が植物と環境との関係をさらに深く学ぶために、また、原書を読み込む時間的余裕のない植物生産関係の試験場研究員や普及指導員がフィールドで活用できる専門的情報・知識を得るために、本書は格好のものである。

(近畿大学生物理工学部 星 岳彦)

 

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