情報利用・普及部会

部会⻑:⻑命洋佑、副部会⻑:菅原幸治、幹事:上⻄良廣


「農林水産分野における情報科学・情報技術の発展と学術の推進を図り、食品産業・農山漁村の情報利用の普及を推進すること」が本会の目的であり、「情報利用・普及部会」では、本会目的の後半部分「食品産業・農山漁村の情報利用の普及を推進すること」を専門的に担い、研究と実践を推進していきます。

情報利用の活用・普及については、情報テクノロジーITで何ができるのか、ITで何をしたいのかなど、はじめにITありきの考え方ではなく、農漁業や農漁村の本質的な意味を、つまり食料産業としての農水産業のあるべき姿を描いて、その上でITを活用した農業のビジネスモデルを考えることが大切だと考えています。

そういう視点で新たな経営を考えるとき、当面の重要な課題の一つに「流通コストの低減」があります。日本の生鮮品が欧米に比べて高いのは、複雑な流通構造がその一因ともいわれています。生産コストの低減ではなく、流通コストをいかに下げるかについて生産・流通・販売の経済構造全体の問題として取り組むことも必要です。

もう一つの重要な視点として、「食品の安全性」があります。スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの大規模小売業では、全国規模で規格品を大量流通させることが必要になります。この過程で、産地毎に多様な農水産物固有の情報は消えてしまう傾向があります。生産段階で規格化が前提となる工業製品と事なり、自然の恵みである農産物は"物質としての農水産物"としては捉えきれない面を持っています。こうした農水産物の食品としての安全性をどの様に担保していくかは重要な課題です。

このためには、生産段階におけるリスク管理と流通段階のリスク管理を組み合わせることが、必要となります。これにより、産地偽装など流通過程における商品ラベルの貼替事件なども防止することができるでしょう。具体体には、農薬や動物医薬品等の生産資材適正使用の支援技術、適正農業規範GAP、トレーサビリティシステムを統合する必要があります。

我々が直面している問題の多くは、いずれも、取引の分断、情報の分断という「生産者と消費者との間の情報断絶」から問題が起こっています。これらの解決には、生産プロセスの明確化(現場の情報化)と流通経路の透明性(流通コストの削減)、商品情報の提供(顔の見える販売)などによって、生産者と消費者とを繋いでいくことが必要です。IT革命といわれる「情報技術の進歩」が、これらの農漁業・食料問題解決のためにどう役立つのか、そのためにはどうすれば良いのかという視点で取り組むことが必要です。

情報テクノロジーIT活用による農水産業の変革にあたり、まずは食品マーケットが先行しており、今後は生産現場も変わる必要性があるということを認識しなければなりません。従来の考え方では栽培技術を磨き生産コストを下げることが主眼でした。今、求められているのは"要求品質"であるという新しい考え方に気付き始めた経営者は、ファーマーズマーケットでの直売やスーパーマーケットへの直送ビジネスやそのフランチャイズ化等に取り組み始めています。大規模市場を中心とした既存流通の関係者も、今までの手数料ビジネスからの脱却を図るべく、生活者の要求品質に応えるマーケティングに取り組み始めるなど、農水産業ビジネスのパラダイムシフトが進行しています。

このような変化のそれぞれの局面では当然、"情報化"がキーワードになっています。BSE問題、産地偽装、残留農薬、未登録農薬使用などの問題解決も、そして食品トレーサビリティなど透明性の高い流通構造確保のためにも、生産から消費までのそれぞれの局面での情報処理と、農場から食卓までの一貫した情報管理(FF2H:from farm to home)が必要になっています。

情報利用・普及部会では、これらの課題に対して生産・流通・販売の各現場の人たちと供に実践並びに研究活動を行うことで、食品産業・農山漁村の情報利用の普及を推進します。