生産・経営情報部会

部会⻑:佐藤正衛、副部会⻑:寺元郁博、幹事:孫雯莉


わが国の農業はその担い手の高齢化と離農、限られた新規就農者、農業労働者雇用の困 難さなどが相まって、農地減少や労働力不足が急速に進んでいる。その一方で、年々拡大 する気候変動や農用資材の高騰、管理農地の拡大と広域分散化などにも対応しつつ、国 内生産力の維持はもとより、海外輸出も睨んだ国際競争力強化にも応えられる態勢造りを 急がなければならない。 

限られた担い手・労働力によって今後の農業生産基盤や生産構造、生産力強化を図るた め、現在わが国ではロボット技術や ICT、AI を活用した新たな農業生産技術体系の一つで ある「スマート農業」への取組を強化している。 

生産・経営情報部会はこのような状況の下、ICT・AI 活用を前提として、農業生産・流通・消 費にかかるスマート・フード・バリュー・チェーンを見通した上で、最上流に位置する農業生 産・経営に関わるアプリケーション・システムやデータベース構築の研究開発や普及を推進 するとともに、こうした情報システムが農業経営および地域社会に与える影響の解明を目 指す。 

農業生産・経営は、栽培方法、品種、気象や土壌条件、水環境、さらに市場条件といった経 済的側面など、多様な諸条件が絡み合う複雑系の下で営まれており、現場で実際に使える 有用な情報システムを考える上で、そのような多様な現場の情報収集は欠かせない。特に AI の活用においてはビッグデータと呼ばれる大量の客観的学習用データの獲得と整備が 不可欠である。しかし、残念ながら農業生産・経営の現場ではこのデータ獲得収集は必ず しも容易ではなく、非効率な場面が多く残されている。 

この意味で、いかに安価でかつ手軽に効率よく、生産から流通・消費に至る現場情報を収 集できるかということが当部会の一つのテーマである。 

併せて、研究開発された各種情報システムを実際の現場で試験運用し、システムの有効性 や問題点を評価することも必要である。これに関連してシステム評価の方法論やシステム 開発へのフィードバックに関する研究も重要となる。 

さらに、生産・経営・流通・消費にかかわる幅広い分野における情報システムの開発・普及 が、農業経営、地域社会、流通・消費構造などにどの様な影響を及ぼすかを明らかにする ことも大きなテーマである。